オフィスIKEIDOの素敵なメディア戦略にやられて『半沢』第1巻を読んでしまった話(と、800字感想文)
9月3日の読売新聞、覚えていますか?
新聞の17-21面が「池井戸新聞」という広告になっていて、池井戸作品の出来事が記事になっていたのですよ。
こんな感じ。
広告も全部池井戸作品。
そして驚いた私がTwitterに投稿したところ、オフィスIKEIDOから数分後にRTされたんですよ!
(追記。あれ⁉︎私のツイートの日付が9月2日になってる?なんで⁇)
ナイス企画ですよね RT @gokigennoriko ちょっと!!今日の読売新聞17-20面が池井戸新聞になってる!(@_@)池井戸作品の出来事が記事になってて広告も全部池井戸作品。面白いよ。
— オフィスIKEIDO (@officeikeido) 2014, 9月 2
新聞に広告展開した当日の朝だからとはいえ、フォロワー数5の超弱小アカウントにRTしてくれるとは素敵すぎます!
そしてまんまと、そんな素敵な池井戸さんの本を読んでみたくなりましたよ…!
元々、池井戸作品を読むとしたら『空飛ぶタイヤ』から読んでみたいと思っていたのですが、この半沢天気予報を理解したくなったので『半沢』第1巻(『オレたちバブル入行組』)を読むことにしました。
800字感想文です。
半沢直樹の怒り方は激しい。熱い、を通り越して焦げそうな怒りの炎だ。例えばこんな怒りの描写。「頭のふたがかぬけそうなほど怒りが沸騰」「半沢の言葉は、怨念という名の表面加工で黒光りする毒々しさを孕んでいた」怖い。
ドラマ『半沢直樹』は熱心に見ていたわけではないが、この話の最後、債券回収と浅野支店長との対決がどうなるかはわかっている。だから半沢が不利でも心配せずに読めたが、少し残念だ。ドラマを見る前に手に汗を握りながら読んでみたかった。
半沢は読者にも弱みを見せない。彼はヒーローだからだ。この小説は半沢目線の三人称で書かれているが、半沢が焦る描写は(逆に、大喜びするような描写も)ない。怒りの描写だけだ。
浅野支店長は対照的だ。後半になると浅野支店長目線の三人称が何度か出てくる。ここで浅野支店長は徹底的に弱みをさらす。この逆転が効果的で、半沢の怖さや凄さをさらに際立たせているのだ。
弱みは見せず、上役の理不尽な仕打ちに抵抗し勝利する。課長として仕事もできて部下に慕われている。給料もそこそこもらっているらしい。そして武闘派でもある。何て素晴らしいヒーローなんだ!
しかし私が半沢に共感できるかというとそうではない。私は仕事でそれほど大きな窮地に陥ったこともないし、卑怯な行為をされたこともない。今の職場は「出向先」と呼ばれる立場の子会社なのだが、親会社からの出向者との間に溝は感じない。私が甘いだけなのだろうが、半沢のやり方に喝采を送ることは、汚い会社社会のあり方を認めることになってしまう気がする。私はそんな会社を認めたくないのだ。例えお人よしと言われても会社やそこで働く人たちを信じたいし、騙すより騙される方がまだマシだと思ってしまう。私なら浅野支店長を脅してまでポストを求めることはできない。5億回収したら黙って刑事告発して、出向になるかは運を天に任せるかな。
- 作者: 池井戸潤
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2007/12/06
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