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父親が急に我が家に来たいと言い出して困ったので『東京物語』を見てみた

※ネタバレしています。

 
タイトルの通りなのですが、困っています。
 
私が母に対してモヤモヤしている話は以前書きましたが、私は父に対しても複雑な感情を持っています。
私の父親は、そこにいるけれども徹底して子供(私と妹)と関わらない人でした。子供の頃は「父がそうなのは、きっと仕事が忙しくて疲れているからなのだ」と思っていたのですが、明らかに他の家庭とは父親像が違っていたし、退職して時間のある現在になっても孫である私の子供達をわざと避けるような態度を取っているのを見て愕然としました。この人は人と関わることができない人なのかと。
そういえば父は近所付き合いも全くしないし、親しい友人もいません。
 
加えて、私の離婚騒動のとき、もともと夫の浮気から始まった騒動であったので精神的に参っていたのと、子供の頃から母が言っていた「うちで一番偉いのはお父さん」「お父さんは頼りになる人」を疑うことなく信じていた(何しろ父と関わりがなかったので反抗期もなかった)ため、離婚に向けての交渉の際に父に間に入ってもらったのですが、見事に上手くいきませんでした。
父は口下手なのですが、何を言いたいのか誰も(母さえも)理解できない。父も、皆が自分の話を理解できないことを理解していない。夫に「何が言いたいのかわからない」と馬鹿にされた父は私に「お前が決めればいい」と言って交渉を放り投げました。
そこで私はいろいろなところに相談しながら自分で対処をしたのですが、自分で対処した方が父に任せるより上手くいったのです。それで、「あれ?お父さんより自分の方が頼りになるんじゃ?」と気づいたのです。随分遅かったですが。
そして自分での対処が終わった後、父に報告の電話をしたのですが(今思うとそんな必要なかった)、そのとき「お前さあ、もっと怒れよ。」と言われて「怒ってるよ!!!」と言い返して受話器を叩きつけてから父とは疎遠になっています。
 
私は何とか大人になることはできたので、なぜうちはああだったのかとか、子供の頃こうしてほしかったということを今言いたくはありません。ただ、放っておいてほしいのです。私の方からも関わりになんてなりたくない。
 
しかし父が我が家に来たいと言う。
上に書いた通り仲良し親子というわけでもないし、私が結婚していた時も9年間で1度しか来たことはないのです。

11月に引っ越したけど毎日忙しくてまだ完全には片付いていない。一気に片付けるのではなく毎日少しずつ片付けるしかないと気付いたのが最近のこと。だけどなかなか進まない。4月から仕事を少し減らす予定なので状況も変わると思うから、もう少し後に来てくれないか、と言ってもダメ。

どうやらまずは1年前に結婚して私と同じく関東に住んでいる妹の家に今すぐ行きたいという考えがあるらしく、ついでにうちにも来たいということらしい。

そんなのますます嫌だ。幸せ新婚家庭の後に団地生活母子家庭をわざわざ見に来るって何なの?いや、私だって子供達との毎日は幸せだけど、まだ人に見せられるほどには見た目が整っていないのだ。
気を遣うとかじゃなくて、自分が嫌っている人間に自分の生活を見せるのには気力がいるのだ。だけどその気力が今はない。
とにかく何度も、怒って訴えたり泣いて訴えたりしたけどダメ。子供がこんなに嫌がっているのに強行するってどういうことなんだろう。絶望する。
 父が来たら怒りが爆発するかもしれないけど、子供の前で爆発はしたくない。
どうしたものか。
 
というわけで「両親が離れて暮らす子供達に会いに行く」話であると聞いたことがある『東京物語』を見たら何かの参考になるかと思い、見てみました。

 

東京物語 [DVD]

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尾道から20年ぶりに上京した夫婦が、子供たちの家を訪ねる。
しかし、彼らはそれぞれの生活を守るために精一杯だった。
ただ、戦死した次男の嫁だけが年老いた義理の両親に優しさを示す…。

 (引用は小津安二郎大全集より)


これは…子供達の忙しさが身につまされるね!前半の長男宅の招く側の描写なんて超あるある。身につまされるからこそ見る者としては「お母さーん!!(T ^ T)」とか「紀子さん…(*^_^*)」とか細かい部分に萌えるしかないという感じ。
でも子供達もできることはやっているので、冷たくあしらったという感じはしなかった。「宿無しになってしまった」ところだって、長女と両親双方が遠慮した結果の意思の伝わらなさでそうなったわけで、その遠慮自体は仕方のないことだと思う。時代もあるし。

他の小津作品を見たことはないのですが、この作品で小津監督は親子の様子を本当に淡々と映していますね。「ほらひどいでしょ!」でも「仕方ないよね」でもなく、ひたすら客観的。
でも、ほんの少しだけ…ドラマチックな方向に寄せようとしているのかな?という感じはする。父母が語らう場面で美しい音楽が流れたり、母親の危篤電報を受け取った後の長男の後ろ姿を長々と映したり(その後にちょっとした崩しが入るのは何でなんだろうね。私はあの崩しはいらないと思うんだけど。監督の意図が知りたいよ)。

そしてユーモアの味付け。あの長男の息子の「じゃあ勉強しなくてもいいんですね!へー!」のところなんてすごく可笑しい。あと長女。出てくるたびにクスリとさせられる。杉村春子の演技が上手い。
あと当時の風景、冒頭の蒸気機関車から始まって東京観光、熱海の温泉宿など新鮮でとても面白かったです。そして紀子のアパート!団地?と思って調べてみると同潤会アパートらしいけど、団地に住んでいる身としては親近感がありました。

参考になるかといえば、そのまま参考にはならない。あるある感だけ。でも60年以上前の作品にあるある感を感じるってすごいことで、監督の描写が相当に上手いからだ。
ともかく必要以上に構えて見る作品ではない、感動作でもないがひどい話でもない、でも大人なら必ず共感できる。興味があるなら見るべきだ。怖くないから。
そして私の父親は60年前の笠智衆以下だと思った。だって笠智衆は何かしてもらって「ありがとう」があったからね。私の父親は無言だ。
冒頭の枕がない云々の騒ぎで「ごめんなさい」はなかったけどね!
熱海で母親がふらついたときに父親は母親を気遣っていたけど、私の両親だったらどうかと考えても私にはわからない。子供に対してなら、間違いなく振り返って気遣うことはなかったけど。

うーんやっぱり父親が嫌いだという話になってしまうなー。
で、結局我が家に父親が来る話はどうなってしまうんだっていう…