簡単なお仕事です

四月のある休日。子供たちは、家に遊びに来た息子の友人たちと遊んでいる。少しは間が持ちそうだった。

 

よし、あの作業をしよう。

 

私は台所の棚を開けた。棚には、実家から送られてきた「きのこの瓶詰め」が2つ入っている。

「瓶を開けて、中身を捨てるだけの簡単なお仕事です」

そんなナレーションを思い浮かべながら、私は瓶を手に取る。

 

瓶のふたはとても固いので、オープナーを使って開ける。オープナー越しでもかなり力を込めて回して、やっと開いた。

流しの三角コーナーにごみ取り用の不織布をセットして、瓶から三角コーナーの中にスプーンできのこを捨てていく。

このきのこは、父が近所の山で採ってきたものだ。父は休日になると必ず山に行き、春は山菜、秋はきのこを採ってきた。私はスーパーで売っているきのこは好きだが、父が山で採ってきたきのこは好きではない。味が強すぎるのだ。「送ってくれるのはありがたいけど、私はきのこは食べないよ。」そう言っても父はきのこを送ってくる。

 

一つ目の瓶の中身を全て三角コーナーの中に捨て終わったので、空になった瓶とふたを水道で軽くすすいで、流しの中に置いた。すぐに二つ目の瓶に取り掛かる。この瓶も固い。ふたが開いたら、中身を捨てていく。

父が採ってきたきのこは必ず「きのこごはん」か「すまし汁」にされて食卓に出された。きのこごはんにもすまし汁もとても薄味で、きのこ以外の具は入っていない。

父は自分ではきのこを調理しないが、母が「きのこごはん」か「すまし汁」以外の料理を出したり、きのこごはんに具を入れたり、味をつけたりすると

「きのこの一番おいしい食べ方を知らないんだね。てーおーちーだーねー。」

と楽しそうに言った。

手落ち。

普段は物静かだが酒を飲んだときだけ陽気になる父はとても楽しそうに節をつけて、まるで何かのギャグのようにいつも母にそう言った。母は特に何も言い返さなかった。

 

二つ目の瓶の中身も全て捨て終わった。瓶をすすいで、スプーンも軽くすすいだ。三角コーナーの中身は新聞紙で包んで、すぐに生ごみ用のごみ箱に捨てた。

 

5分で終わった。