特別な「悲しい思い出」がたくさんあったっていいよね(『インサイド・ヘッド』感想)

※ネタバレしています。 

『インサイド・ヘッド』の日本語吹き替え版を見てきました。

元々映画館に見に行くつもりはなかったのですが、愛聴しているタマフル(TBS RADIO ライムスター宇多丸のウイークエンドシャッフル)の8/15の映画批評が『インサイド・ヘッド』だった*1ので興味を持ったのと、子供たちが元夫と泊りがけで旅行に出かけて時間ができた*2ので映画館に見に行ってきました。

あらすじや前評判をほとんど知らずに見に行きましたが、本当に面白かったです。そして、ものすごく泣けました。

 

※最初にも書きましたが、ネタバレありでいきます。見に行った人は「そうだったよね」と思いながら読んでください。見に行っていないのに内容が気になる人は、気になっているなら絶対に見に行った方がいい!読む前に見に行ってください。

 

www.disney.co.jp

 

さて。

感想

 私はライリーと同じく転校生だったので、ライリーにものすごく感情移入できました。でも転校初日の気持ちは、ライリーのように喜び中心ではなくて、ビビリ8割ムカムカ2割くらいでした。個人の性格の問題でしょうね。

私は父親の仕事の都合で4歳から8歳までのほぼ毎年、引越しを経験しました。4歳(幼稚園年少)までは母親の実家で祖父母と同居していましたが、年中になるときに同じ県内ですが100km位離れた市に引っ越しをしました。それから年長になるときに同じ市内で引っ越しをしました。幼稚園は変わらなかったですが園バスの便が変わって、近所の友達も変わりました。それから小学校に上がるときに隣の県に引っ越しをしました。小1から小2に上がるときだけは引越しがなくて、小2から小3に上がるときに元の県に戻ってきました。4歳まで住んでいた市とも、小学校に上がるまで住んでいた市とも違う市です。それ以降は、父親が単身赴任をしました。

この「小学校に上がるとき」と「小3に上がるとき」の県をまたいだ移動が辛かったなあと思い出されます。隣の県と言っても、新潟県富山県(小1、小2の2年間だけが富山)なので言葉が全然違うんですよね。「小学校に上がるとき」は言葉が違って、知っている子も全くいない状態だったのが辛かったし、「小3に上がるとき」は引越し先のクラスメイトとピアニカや「みんなのうた(音楽の副読本)」の規格が違うのが悲しかったです。私のピアニカはなぜか短くて、高音を弾くときはエア演奏をしなければならなかったり、「みんなのうた」は小3時点での版とクラスメイトが持っている版が違っていたので、先生が言ったページに歌が載っていなかったりとか、ありましたねー。そんな風に、忘れていたいろいろな「転校して悲しかったこと」が思い出されました。

「このように、物心がつくころに引越が多くても何とかやってきて、無事大人になったけれど、やはり悲しいことも多かったな」ということが一番の気持ちです。そして「よくやったよね」と思います。「ライリー、楽しくやれているようで、よかったね」とも。

 

悲しみは大事なんですけどね。映画でカナシミがビンボンを慰めたように、「悲しみを知っていると人に優しくなれる」のは本当だと思います。でも「経験しなくていい悲しみなら、経験しない方がいい」とも思います。引越しが多かったことについて、私は両親を少し恨んでいます。でも「悲しいことが多かった私」こそが私であるわけなので、別に両親に今何かを言いたいわけでもありません。「よくやったよね」と思うだけです。

これは、私が離婚して子供たちに多少なりとも悲しい思いをさせたことにも通じるのですが、どうにもならなかったのです。もちろん、経験しないことが一番だし、そういった悲しみを経験しない人も多いです。今後、子供たちの悲しみが何らかの形で表に出てきたとしたら、私はその悲しみに向き合うつもりです。といっても、話を聞くくらいしかできませんが。

 

ともかく、この映画を見て私は「この私」こそが自分なのだと思ったし、そんな自分が好きになりました。タマフル宇多丸さんが言っていたように「頑張ろうと思った」とまではいかないけどね。でも、自分を好きになる、何とこれはピクサーの狙い通り*3だ。狙い通りに楽しめました。

 

その他、いろいろと思ったことなど。

 一番好きなのはやっぱり「カナシミ」

悲しい記憶が思い出されたからというわけではないですが、キャラクターの中ではカナシミが一番好きです。見た目がかわいい。あの幼児体型と柔らかそうな顔の肉がいい…!

 上記公式ページの「あなたグラフ診断」(スマホからのアクセスのみ)でも私は当然「カナシミ/ヨロコビ」型でした。やっぱりね。

 

泣いた場面

ものすごく泣けた、と書きましたがこの映画を見ている間私は泣いてばかりでした。

まず、私は子供を持つ親であるので、最初の「赤ちゃんのライリーを見て喜ぶ両親」を見た時点で子供たちが赤ちゃんだったころを思い出して泣けました。それからライリーってすごくいい子なので、そのいい子ぶりに泣けました。「パパが大変だから笑っていてあげようね」とか。

他にも泣けるシーンが多数。一番泣けたのはもちろん、ビンボンがいなくなってしまうシーンです。あの場面で私は声をあげて泣きたかった。でも両隣に人がいたので我慢しました。このシーンで声を上げて泣くためだけにDVDが欲しいです。

そのシーン以外にも、上に書いた通り自分の悲しかった記憶が思い出されたりもしたため、映画が終わった後はなんとか平静を装って(車で見に行ったので)車まで行き、車の中で声を上げて大泣きしました。その後、家に帰った後もカナシミのようにうつぶせになって泣きました。涙もろい人間にとって、それほど泣ける映画です。

 

楽しかった場面

もちろん、楽しい場面もたくさんあります。というかこの映画で悲しい場面と楽しい場面が交互に出てくるのは意図的だと思います。泣かせすぎないようにバランスを取っているというか。

私が好きなのはイマジナリーランド全般と、キャラクターが二次元になるところ(ピクサーすごい!)。

ライリーの潜在意識の恐怖心の世界は、ホラー的映像として好き。

 

みんなのインサイドヘッド

パパの司令部、ママの司令部が出てくるのが面白い。しかもリーダーとなる感情は人によって違うのが面白い。

パパとママの司令部が出てくるのが途中1回と最後1回、そのあとエンディングにいろいろな人の司令部という回数のバランスも良かった。これ以上出していたら、面白くなくなっていたと思う。

 

ファンブックで気になった小ネタ
ディズニー/ピクサー インサイド・ヘッド SPECIAL BOOK (バラエティ)
 

映画が面白すぎたのでオフィシャルファンブックを買ってしまいました。付録のポーチいらない…。でも、良いファンブックです。ライリーのマインドマップの絵が美しい。それから、表紙裏に映画の名場面がいくつか載っているのですが、その場面の選び方が一ひねりあって面白い。例えば、「パパとママがフェイスペイントで応援している場面」とか「レインボーユニコーンさんのステージ」とか。「そうそう、こんな場面があった!」と楽しい気持ちになれます。

それから「ヨロコビは光を発しているので、ヨロコビには影ができない」って書いてあったけど、そうだったか覚えていない。もう一度映画を見返したい!

影の件はこのニュースにも書いてありました。

www.rbbtoday.com

 

 納得がいかなかった点

脳科学的にはそうなのかもしれないけど、納得がいかなかったこともあります。

  • カナシミが思い出ボールに触ると、思い出が悲しくなること
  • 思い出のごみ捨て場の中でも、悲しい思い出だけは輝きを失っていないこと。そういうものなの?自分も悲しかった思い出ばかりが蘇らせておいて何だけど、でも「人生って悲しみばかりがいつまでも残っていくものじゃない」と信じたいんだけど。
  • 映画に対してじゃなくて、上記のファンブックで共同監督のロニー・デル・カルメンが「子供のころは誰でも、空想の友達を作り出します」と言ってるけど、私には空想の友達はいなかった。本をよく読んでいたから、本が友達だったのかもしれないけど。物語としてビンボンの存在は絶対に必要だし、子供は空想が好きなのはわかるけど「誰でも」と言われると違和感がある。

 

感想は以上です。

あ、映画最初のドリカムの主題歌は本当にどうかと思いました。「Let it Go」のように歌わせたいにしても、字幕が漢字交じりで、これでは子供たちが一緒に歌えない。というか吹き替え版なのに最初の監督あいさつは字幕で、これはドリカム世代である親に向けての映像であるということなんですかね。映像も良くなくて、写真の切り替わるタイミングが早いので目が疲れるし、写真の並べ方も余白なくぴっちり並べているのでまるで安いフォトブックのよう。上記公式ファンブックの表紙裏の名場面の並べ方の方がよっぽどセンスがあるわ。

映画「インサイド・ヘッド」でのドリカムに困惑する人々のまとめ(抜粋) - Togetterまとめ

見たよ!“あの演出考えた人のインサイドヘッドはどうなってるのか見てみたい”確かに。

2015/08/19 15:06

 南の島の短編は、タマフル宇多丸さんが言っていた通りだと私も思いました。「頭がおかしいと思います。でも好きです。」

 

 私の気になるグッズ。

 私がゆるく集めているトミカのディズニーモーターズにインサイドヘッドが!しかもカナシミ単独の車も!

文具・雑貨などはキャラクターが人型であるせいか絵があまりかわいいと思えず、このクリップくらいしか気になるものがない。

*1:リンク先からPodcastで聞けます

*2:しまった!「文章」カテゴリはフィクションなんだった!

*3:上記公式ページの作品情報に「もっと自分が好きになる――これはあなたの物語。」とある