読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

『桐島、部活やめるってよ』本と映画の感想

ネタバレしています。


この本が発売されたのは2009年。話題になっていることは知っていたけど2008年に生まれた息子の育児に追われていて読む暇がなかった。そして2010年に娘が生まれてますます余裕がなくなり、少し余裕ができてきたかなと思っていたら離婚騒動でまた余裕がなくなった。それが最近ようやく余裕ができてきて、ふと「小説でも読もう!」と思い立って図書館に行き、「あ」の棚から順に物色していたところ、この本を発見して「そういえばずっと読みたいと思っていたけど読んだことがなかったなー」と思ったので借りて読んだ。結果、とても面白かった。面白かったので本を2回借りた後「これはもう手元に置いておいた方がいい!」と思って文庫本を購入してしまったほど。

桐島、部活やめるってよ (集英社文庫)

桐島、部活やめるってよ (集英社文庫)

Amazonレビューの評価の低さよ…。信じられない!

文庫は解説が映画版の吉田大八監督だし、WEB掲載された新章「東原かすみ〜14歳」がついているのでお得だ!!!

登場人物(に限らず高校生活全般の)あるある感がすごい。それでいて作者の主張が感じられるものとなっている。菊池が前田の「ひかり」に惹かれ、それまでとは違う道を歩もうとするのがその象徴だ。でもこのラストわかりにくいよね。っていうか宏樹はそれまで散々自分の内面を語っているくせに「野球部に戻るのか」については何も語らないんだよね。語らないことが不満なんじゃなくて、それまでの宏樹のキャラクターと違っているので、あのラストの描き方は不満だ。読み終わった後もう一度最初から読み返すと「野球部に戻る」つもりで歩いていくラストであることが明確にわかる記述が最初の方にあるんだけど(だから、記憶力がいい人はすぐにピンとくるのかもしれないけど、私はピンとこなかったよ…)。*1

あと「桐島」の章が読みたい。読んだ人それぞれが想像するのが正解なのはわかっているが、朝井リョウ氏の見解が知りたい!


そして映画版。

「そういえば映画にもなっていたなー」と思ってDVDをレンタルして見てみたら、これまたとても面白いじゃないですか!そしてとても面白かったのでDVDをもう一度見返してから本に戻ってみると、また新たな発見があるじゃないですか!*2

というわけで本と映画を比較して感想を書いていきたいのですが、直近に見た映画版の熱量が高すぎるので、どうしても映画の方に偏った感想になってしまうと思います。とはいえ本の方も大好きなので、また読み返して何か発見したら追記するかもしれません。

桐島、部活やめるってよ (本編BD 特典DVD 2枚組) [Blu-ray]

桐島、部活やめるってよ (本編BD 特典DVD 2枚組) [Blu-ray]

出演者の方々の演技の上手さについては改めて触れません。

本と映画の一番の違いは物語の切り取り方だと思う。本では「人」で物語が切り取られているが、映画では「時間」で切り取られている。のだが、映画の時間軸の遡り方が複雑。単純に違う視点で同じ時間を繰り返しているのではない。

「一部巻き戻し」というか。例えば終盤の前田ラストでの「屋上から下りてくる宏樹」から「宏樹目線のラスト」(最後は「屋上から下りてくる宏樹」が繰り返される)への繋がり。「屋上から下りてくる宏樹」がなぜ繰り返されるのか。素人目線で考えると最初の映像はなくてもいいと思ってしまうんだけど、きっと意味があるんだろうし(入口でキャプテンと会話したから?)、そのセンスがすごいと思う。っていうかこんな見せ方ができる映画ってすごい。あと「好きになると、人はその人を目で追ってしまう」様子の映し方とか。自分が高校生の時にこの映画を見ていたら、絶対映画部を作って映画を撮ってるよ!前田に憧れるんじゃなくて、この映画に憧れるよ!


それから、本では風助の内面や実果の家庭の事情が描かれているが、映画ではカットされている。そこは本を読むと補完できるのだが、映画と全く違う部分もあるので「本が映画で語られていない部分をそのまま埋めてくれる」と考えると混乱してしまうかもしれない。

私が混乱した部分。

  • 実果に彼氏。梨紗と実果が彼氏の下校待ち仲間
  • 実果はバドミントン部ではないし、ライバル心を抱いている部活仲間はかすみではない
  • 沢島さん周りの人間関係
  • 沢島さんの好きな人
  • 竜汰の彼女(描かれていない)
  • 中学時代の前田とかすみの距離ーー!!
  • 映画の脚本を書いているのは武文

「もし、その通りはまっている部分があるとしたら、それはその通り読み取っていい」くらいの感じ。でも「まったく別物!」とも言い切れない。

映画になって、動いている様子が見られて良かったなと思ったのは宏樹と梨紗・沙奈だ。原作を読んだときには宏樹が内心で周りの人を見下している嫌な奴としか思えなかったんだけど、映画を見ると、確かにこんな人もいるかもなあと。東出昌大さんの演技が良かったのもあるけど。あと梨紗と沙奈は、クラスで目立つけど実果や宏樹から内心で距離を置かれている女子…ってどんな感じなのか想像がつかなかったんだけど、映画を見たらなるほどこんな感じなのかと納得がいった。*3

 

最後に。1回目に見たときは「自分は前田だ!」と思ったんだけど、2回目には「高校生の時の自分は前田だったけど、今は武文になっているかもしれない」と思った。高校生の時私は演劇部であり新聞委員(委員といってもクラスから決まった人数を強制的に出すのではなく、希望者のみで構成されている。なので部活のようなもの)であったので前田と同じくマイナーな文化部、であるのだがそれでけではなく、自分の好きなものに対して前田の「ロメロだよそれくらい見とけ!」な勢いであったのが、今は過剰に卑屈になってしまっている。武文は「(体育で活躍するクラスメイトに対して)不毛なことをさせといてやるよ」とか「(『おっ待た〜』をバカにされて)オレが映画監督ならあいつらは使わないね」とか、いちいち口に出すんですよね。ちょっと私もそういうところがあるので、反省。

*1:映画のラストも私は「野球部に戻る」派

*2:さらに言うとタマフルシネマハスラーの『桐島』の回と放課後Podcastと、サタデーナイトラボの『桐島、あのシーン忘れてるってよ!』も探して聞きましたよ。当時はタマフル聞いてなかったので。宇多丸さんがやたらと久保(ゴリラ)を敵視するのが面白かった。この映画の「響くポイント」って、本当に人によって違うんだなー。

*3:梨紗かわいいよね!でもよく見ると沙奈以上にキツイね。沙奈が「桐島くんと話するとき、一緒に行くね(セリフはうろ覚え)」に対して「何で?」のところとか。