夜空に向かってボールを投げ上げる

ぼくが晩ご飯を食べ終わって、お母さんが晩ご飯を食べ終わったので、ぼくは「キャッチボールやるよ!」と言って外に出た。
ラッキー!団地の中の道の、先が行き止まりになっているところに今日は車が止まっていない。ここは道に電気が付いていて明るいからボールがよく見える。
ボールを上に投げる。1、2、3。3秒数えたらボールが落ちてきた。12345、早く数えたら5秒いけた。12。1234。

「お待たせ。」お母さんが来た。
「いい?夜の8時ちょっと前といっても、本当は子供が外で遊ぶ時間じゃないし、寝てる人もいるかもしれない。静かにね。ちょっとだけやったら帰るよ。」わかったよ!ぼくはボールを投げる。
「ボールが見えない!」お母さんは転がっていったボールを拾いに行って、拾ったボールをぼくの方に転がした。「ごめんごめん、意外と見えないね。」ぼくはもう一回ボールを投げる。
ぱしっ。お母さんは今度はボールを捕った。お母さんは右手にはめたグローブを外して左手に持ち替えて、右手でボールをぼくに投げた。なぜいちいちこんなことをするのかというと、このグローブはお父さんので、お父さんは左ききだからだ。ぼくのグローブは右きき用なので、ぼくはグローブを外したりしなくていい。
ぼくはボールを捕れなかった。ボールを拾いに行って、もう一回投げる。ぱしっ。お母さんがボールを捕る。グローブを外して投げ返す。ぱしっ。ぼくはボールを捕れた。ボールを持って投げ返す。

ぼくはたまにボールを捕れる。「すごいね!」とお母さんが言う。
ぼくの投げたボールがお母さんの顔の前に行った。「危ねえ!」
「今さあ、うちら結構いけてたよね?5回続いたよ。」

楽しい。ぼくは笑う。「静かに!」

息子がボールを投げる、私はボールを捕る、グローブを外す、投げ返す、グローブをはめる、またボールを捕る。こんな時間がいつかは終わってしまうことがわかっているから、私は忘れないようにしようと思う。