池袋から目黒まで

用事があって池袋から目黒まで家族3人で山手線に乗った。

子供たちは空いていた座席に座って、私は近くのドアの前に立った。
進行方向に向かって右側、たびたび子供たちの方を振り返りながら、私は窓の外の景色から目が離せない。7年前、息子が生まれる前は新宿のある会社で働いていて、池袋から山手線で通勤していたので懐かしい景色だった。

目白駅前の緑色のマンション。小さな住宅がたくさん。マンション。水の少ない神田川。マンションの外壁に入ったヒビや干してある布団や洗濯物が日の光にあたって輝いていて、私はそういった景色を愛おしいと思った。高田馬場駅のホームから見える、外壁を水が流れるビル。高田馬場駅を出ると、手前から奥に向かってカーブしながら登る坂が何本かあって、このカーブの具合は私が最近夢に見た「元夫が死ぬのを見届けた後、一人で町に戻る坂」のカーブに似ているな、と思った。あるいは7年前に見ていたこの景色が他の景色と合わさって夢に出てきたのかもしれない。線路のすぐ脇にある公園の雲梯は波のような形をしていて、小学生くらいの子が遊ぶのによさそうだ。鉄棒も高さがあっていい。
新宿が近付いて、私が働いていたビルも見えたが特に感動はなかった。それよりも雑居ビルの中に一つ一つ入った会社や店と、居酒屋の看板だ。新宿の先にはあまり行ったことがないので景色に懐かしさはない。茶色系が多いマンション、明治神宮の中で斜めに伸びる太い木、たくさんの枝の緑色。
そうこうしているうちに私も座れて、マンションを眺めたり、日の丸自動車学校の大きな丸を、見てごらん、と子供たちに教えたりしていたら目黒を乗り過ごしてしまい、逆回りに乗り直して戻った。